「つなぎ売り」のクロス取引で株主優待を貰う方法と注意点

「つなぎ売り」のクロス取引で株主優待を貰う方法と注意点

「つなぎ売り」や「クロス取引」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

今回は、「つなぎ売り」と「クロス取引」を使って下落リスクを回避して株主優待を手に入れる方法と注意点について解説します。

この方法のメリットとしては、以下のことが挙げられます。

  • 株主優待が貰える
  • 配当金は「つなぎ売り」で相殺される
  • 株価が大きく下落しても損失にならない
  • 手数料がほどんどかからない

では、その方法について見ていきましょう。

「つなぎ売り」とは?

「つなぎ売り」とは、「現物株式で保有している銘柄を、信用取引で売り建てる(空売りする)取引のこと」を言います。

このつなぎ売りは保有する現物株の下落が予想される時に、現物株を売らないで信用取引で空売りすることによって、株価変動による影響を相殺して、値下がりのリスクを回避するという投資手法です。

つなぎ売りは値下がりリスクを回避するための投資手法

つなぎ売りが株主優待を貰うのに有効な理由

では、なぜこの「つなぎ売り」が株主優待を貰うために有効な手段と言えるのでしょうか?

権利落ち日以降の下落リスクを回避する

それは、つなぎ売りをすることで、権利落ち日以降の株価の下落リスクを回避することが出来るからです。

  • 権利付最終日:配当や株主優待を貰うためには、この日の大引けに株を保有していなければならない
  • 権利落ち日:権利付最終日の翌営業日で、この日以降に株を売却しても、配当や株主優待が貰える

多くの人が配当や株主優待を目当てに、「権利付き最終売買日」に株を保有し、翌営業日の「権利落ち日」に株を売却します。

そのため、権利落ち日以降は株の需要と供給のバランスが崩れやすく、株価が大きく下落しやすい環境だと言えます。特に株主優待の価値が大きい株ほど、その傾向は顕著です。

もし、配当金や株主優待が欲しくて株を買ったとしても、翌日以降に配当金や株主優待の価値以上に株が下落すれば、それらを貰う意味が無くなってしまいます。

株主優待は現物株で保有しないと貰えない

2つめの理由として、株主優待は現物株で保有しないと貰えないという特徴もあります。

そのため、信用取引の「買い建て」と「売り建て」で株価の下落リスクを回避したとしても、株主優待は貰えません。必ず現物株式で買い、信用取引で空売りすることが条件になります。

クロス取引とは?

「クロス取引」とは、「同一銘柄を、同数量の買い注文と売り注文を同時に発注し、約定させる取引のこと」を言います。

クロス取引は主に次のような時に有効になります。

  • 年末の株の売買損益の調整時
  • 信用取引の返済期日
  • 株主優待取り

株主優待を貰うのにクロス取引をする理由

では、なぜクロス取引が株主優待を貰うために有効な手段になるのでしょうか?

それは、別の時間での「つなぎ売り」では買った時の株価と空売りした時に株価に違いが生じるからです。

クロス取引をすることで、同値で約定させることができるために、株主優待だけを貰えて買値と売値の差から生じる損益を無視することができます。

「つなぎ売り」の「クロス取引」の違い

サイトの記事を見ていると、「つなぎ売り」と「クロス取引」を同じような意味で使っている場合があるようです。

念のため、もう一度「つなぎ売り」と「クロス取引」の違いをハッキリとしましょう。

  • クロス取引:ある銘柄の注文において、同数量の買い注文と売り注文を同時に発注し、約定させる取引
  • つなぎ売り:ある銘柄の注文において、保有している現物株と、同数量の信用取引の売り建て(空売り)注文を発注し、約定させる取引

つまり、「クロス取引は同時に発注する取引」「つなぎ売りは現物で保有する株に対して空売りをする取引」という違いです。

クロス取引は仮装売買に注意

クロス取引は自分の買い注文と売り注文をぶつけて行うために、出来高が増えることによる仮装売買を疑われる場合があります。

そのため、クロス取引にはある程度、決まったルールに基づいて行う必要があります。株主優待を貰うためのクロス取引でも、そのための手順がありますので、次に「株主優待を貰うための具体的な手順」について解説します。

「つなぎ売り」の「クロス取引」で株主優待を貰う手順

株主優待を貰うための「つなぎ売り」の「クロス取引」では、具体的に次のような手順になります。

  • 権利付最終日の寄り付きまでに成行注文を出す
  • 大引けまで株を保有する(何もしない)
  • 権利落ち日以降に空売りした株を「現渡」にて決済

たったこれだけです。ただし、これもそれぞれのポイントを守ることが必須条件になります。

手順1:権利付最終日の寄り付きまでにクロス取引の注文を出す

株主優待の権利を取るためには、権利付最終日の大引けに株を保有していなければいけません。

しかし、クロス取引では仮装売買にならないように、権利付最終日の寄り付きまでに「現物買いと信用取引の空売りを成行注文で発注」しなければいけません。

この手順での注意点は以下の通りです。

  • 寄り付き前に発注する
  • 権利付最終日までに発注する
  • 成行注文で現物買いと空売りを同株数発注する
  • 目的の株式優待を貰う最小限の株数で発注する

手順2:権利付最終日の大引けまで株を保有する(何もしない)

あとは、権利付最終日の大引けまで、現物株も空売りした株も放置しておけば、自動的に株主優待を貰える権利が発生します。

要は、何もしなければいいだけです。

手順3:権利落ち日以降に空売りした株を「現渡」で決済

「現渡」とは、信用取引の売り建玉を買い返済するのではなく、保有している現物株を返却することで手仕舞うことです。

権利落ち日以降に現渡することによって、株主優待の権利を獲得した状態で、現物株と空売りした株が相殺することで、株主優待取りの「つなぎ売り」が終了します。

株主優待を貰うための諸経費は?

ちなみに、SBI証券では現渡の決済は手数料が無料で利用できます。ですから、この方法で必要な諸経費は、以下の3つだけです。

  • 現物買い注文の手数料(クロス取引時)
  • 新規の空売り注文の手数料(クロス取引時)
  • 持ち越した日数の貸株料

これと株主優待の価値を比較してもらえれば、どちらがお得かがわかります。

ただ、信用取引をする際に、これ以上諸経費がかからないために、一つだけポイントがあります。

空売りは一般信用取引で注文する

株主優待を貰うための「クロス取引」には一つだけ注意点があります。それは、空売りは一般信用取引で注文することです。

この理由は、制度信用取引では空売りされる株が急激に増えると、株不足から「逆日歩(ぎゃくひぶ)」が発生する可能性があるからです。

制度信用取引でも、株主優待を目的とした空売りが増える可能性があるので、仮に高額な逆日歩が発生してしまった場合には、貰う株主優待の価値よりも支払う逆日歩の方が多くなる可能性もあります。

一般信用取引で空売りできる銘柄が多い証券会社

ただし、一般信用取引で多くの銘柄を空売りできる証券会社は、それほど多くありません。

今回紹介した株式優待を貰うための方法はSBI証券のサイトを参考にしています。以下は一般信用取引で空売りが可能な証券会社です。詳細については、各証券会社のサイトから確認することができます。

各証券会社で一般信用取引で空売りできる銘柄は違うので、もし本格的に株主優待を目的とした「つなぎ売り」をするのであれば、複数の証券会社を開設してもいいかもしれません。

※株主優待を目的としたクロス取引をする際には、念のためご利用の証券会社に手順の確認をしてください。万が一、今回解説した方法により不利益を被ったとしても一切の責任は負いかねますのでご了承ください。

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