「上げ100日下げ3日」という投資格言があるように株式市場の値動きは上げる時よりも下げる時の方がずっと早くなります。
その理屈は単純で「持っている株の価値が下がるのは、持っていない株の価値が上がるよりも当事者にとって深刻」だからです。そんな動きの速い下落相場で損失を抑える投資術について解説します。
保有株の下落の小さい銘柄を売り、大きい銘柄を買い増しする
分散投資で複数の銘柄を保有している場合、下落相場においてそれぞれの銘柄の動きには違いが生じます。
例えばA株とB株をそれぞれ100万円分保有いたとして、A株が10%下落、B株が3%下落している状況であれば、A株の方が相場による影響が強いと言えます。
この場合、私はまず「B株を20万円分3%下落したところで売却して、A株を20万円分10%下落したところで買い増ししよう」と考えます。
値下がり幅が大きいA株の方が強い反発が期待できるからです。もし、そこからさらに下落したとしても、大きく下落したA社の方がB社よりも下げ幅が限定的である可能性が高いと判断できます。
ただ、株式投資がそう単純ではないのは投資をされている方なら十分にご存知だと思います。この手法を利用するにはいくつかの条件を満たしている場合に限ります。
その条件について下にまとめてみました。
条件1:長期保有を目的とした株である事
買い増す株が財務的・業績的に将来性があることは大前提です。ファンダメンタルズ的な魅力がなく、投機目的で買っている銘柄であれば買い増しはリスクでしかありません。
条件2:比較する2つの株の性質が近い
性質というと漠然としていますが、要はPERやPBRなど基本的な指標や業績が近い銘柄が望ましいということです。
例えば、東証スタンダード市場の普段から出来高の少ないバリュー株と東証グロース市場の普段から出来高の多いグロース株を比較しても効果は薄いでしょう。
似通った性質があるからこそ、株価推移の違いを利用してリスクヘッジが可能になります。
極端な話、同業種、同市場、財務的業績的に似通った株であれば、この手法がより効果的という事です。
株価の変動は銘柄によって特徴がある
この手法が効果的なリスクヘッジになる理由は「銘柄によって株価の短期的な動きには特徴がある」からです。
特に中小型株の場合には、1日で売買される株数自体が非常に少ないために、少数株主による株価の変動が大きくなります。
中小型株は少数株主に影響されやすい
そのため、中小型株では下落相場でパニックになった少数株主のパニック売りなどですら、株価に大きな影響を与えます。
その結果「片方は下落相場の初めから大きく株価を下げ、もう一方は少し遅れて下落が始まる」という下落相場における個別銘柄のタイムラグが度々起こります。
私自身も下落相場では、保有株の中で特徴が似通った銘柄の株価変動を比較し、投資割合を調整することで、下落相場の損失を抑えることに成功しています。
急落相場で保有株が下落するのを耐えるのではなく、ちょっとした工夫や調整をしてみるのも投資の楽しみ方です。