今回は3年繰越控除をした翌年以降に利益が出た場合に確定申告をする注意点を解説します。
前回の記事では譲渡損益の繰越控除をすることで、翌年以降3年間は利益が発生しても損失分の控除ができるという話を中心に記事にしました。
今回は繰越控除をして、その後に確定申告をすることで、条件によっては結果的に控除できる税金以上の支払いになるかもしれないという話です。※この記事では国民健康保険料加入者が対象となる制度です。

繰越控除をするには確定申告が必須
株式投資で損失が出た場合には、一般口座でも特定口座でも確定申告をする必要はありません。なぜなら支払うべき税金(所得税・住民税)がないからです。
義務ではない一方で損失を申告することで、その翌年から3年間の利益から損失分を控除できる制度があります。それが譲渡損失の3年繰越控除ですね。

株式譲渡益の税率は20.315%もありますので、一般的には損失が出たときには確定申告をした方が、今後の事を考えると得になるケースがほとんどです。
控除するなら翌年から3年間も確定申告をする
そして、この損失控除の制度は、その後の3年間の売買譲渡損益も確定申告をしなければ適用されません。「特定口座で源泉徴収あり」にしていたとしても、自動的に損失控除してもらえるわけではありません。
この制度を利用するためには、その後の3年間も確定申告が必須になります。※但し、3年以内に損失分を全て控除した場合は、その後の申告は必要ありません。
また、1年目は取引していないので2年目の利益から控除したいと思っていた場合でも、取引がない1年目から確定申告をする必要があります。
控除しきれない利益を確定申告だけすると国民健康保険料が上がる
損失を申告した翌年以降の利益の確定申告ですが、実はいくつかの注意点がありますが、そのひとつが国民健康保険料です。
その注意点というのは、「確定申告をしたことで、控除された税金以上に国民健康保険料の負担が大きくなるかもしれない」ということです。
どういうことかと言えば、確定申告によって決まるのは、所得に対しての税金の額だけではありません。国民保険料の算出や扶養認定などにも申告した所得が関わってくることになります。
「特定口座の源泉徴収あり」なら税金のみ
「特定口座の源泉徴収あり」の口座は個人投資家にとっては非常にありがたい仕組みです。
この特定口座で源泉徴収ありにしていれば、利益が出ても確定申告が必要ないだけでなく、国民健康保険料や扶養認定など所得税・住民税以外のことには株式譲渡による所得は関わってきません。(あくまで個人的な調べと見解です)
国民健康保険料が上がるケース
繰越控除を利用した際に、国民健康保険料が上がるケースは、「控除する額よりも利益の額の方が大きい場合」です。
例えば、20万円の損失が出た時に確定申告したとします。そうすると、翌年以降3年間は20万円までの利益が繰越控除の対象となりますが、翌年だけで300万円の利益が発生したらどうなるでしょう。
その時は「利益300万円-控除20万円」で280万円分が他の所得に加算されることになります。
確定申告した結果、控除分20万円で約4万円の節税になりますが、280万円所得が上がることで国民健康保険料は年間で4万円以上高くなる可能性が出てきます。
【国保対策】住民税の申告不要制度を利用する
国民健康保険は住民税の課税の取り扱いに準じるために、住民税に対しての申告を不要にすれば、株式投資の利益はこの国民健康保険に影響する所得にはなりません。
ですから、確定申告をするだけでは損をする可能性もありますが、この制度を利用することで住民税に対しては申告しませんという選択が出来るということです。
ただし、住民税を申告しないということですから、住民税に対しては繰越控除は適用されないことになります。上記のように極端に損失よりも利益が大きくなるような例では、所得税だけを繰越控除して、住民税を申告不要として住民税を払ったほうが、結果的には負担が少なくなる可能性が高いということです。
住民税を申告不要にすると
- 株の利益が国民健康保険の算出基準に該当しない
- 損失の繰越控除が住民税では適用されない
- 住民税と国保の値上がりのどちらが大きいかがポイント
また、住民税の申告不要制度の利用方法については、自治体によっても若干制度が異なる場合がありますので、お住まいの自治体などにお問い合わせください。また、「特定口座の源泉徴収あり」以外の証券口座ではどちらにしても申告が必要になります。
【まとめ】繰越控除を適用するには国民健康保険料の上昇を考える
繰越控除では、損失分をピッタリと利益分と相殺することは難しいと思います。利益が出ているなら、3年以内のどこかで控除分よりも利益額が大きくなる可能性があります。
その時の利益と控除の差額が大きい場合、国民健康保険加入者では住民税よりも保険料が大きくなる場合があるという事は注意した方が良いでしょう。
住民税の5%か国民健康保険料の値上がり額か、どちらが大きいかを計算してから、住民税の申告不要制度を利用するかを決めるのが良いと思います。
※この記事は私の体験と調べによるものですが、専門家ではありませんので誤りがある場合もあります。この記事の内容により不利益を被った場合でも一切の責任はとれません。確定申告をする際には、必ずご自身で税務署や専門家、各自治体にご確認ください。
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