今回は、配当金を確定申告する場合は、総合課税と申告分離課税を選択できること、それぞれの課税方法を発生するメリットや注意点について記事にしました。
「特定口座の源泉徴収あり」の口座を開設している人は、損益の計算や配当金や売買譲渡益にかかる税金の支払いも、証券会社が自動的にやってくれるために確定申告をする必要はありません。
しかし、所得が低い場合や売買による損失が出ている場合には、確定申告をすることで税の還付が受けられる場合があります。
※確定申告では私を含め一般人にはかなり複雑な条件のもとに税額の計算やそれ以外のことに影響を与えます。一概にこれが正解というには、難しいものがありますので、この記事は参考程度に読んでいただきたいと思います。
配当金と確定申告
配当金は株を保有していると、年に1、2回程度、企業から株主に利益の還元として支払われます。配当金は譲渡損益と違い必ず利益になるために所得になるために、特定口座で源泉徴収なしや一般口座の場合は確定申告が必要になります。(特定口座の源泉徴収ありでも確定申告することは可能です)
配当金は総合課税と申告分離課税を選べる
配当金は確定申告する際に、総合課税と申告分離課税のどちらの課税方式をとるのかを選択することができます。ちなみに、株の売買による譲渡損益では申告分離課税しか選択できません。
では、総合課税と申告分離課税ではどういった違いやメリットや注意点があるのでしょうか。
配当金を総合課税で申告する場合のメリット
総合課税とは、各種の所得金額を合計して所得税額を計算するというものです。 個別で税率を定めて課税するのではなく、所得の合計に対して税率が定められています。
総合課税制度|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2220.htm
配当金で総合課税を選択するメリットとしては、「配当控除」が受けられることが一番大きいでしょう。
配当控除とは
配当控除とは、株の配当金などを一定の方法で計算した金額の税額控除をうけられるシステムです。
配当とは日本国内に本店のある法人から受ける剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配、金銭の分配、証券投資信託の収益の分配などで、確定申告において総合課税の適用を受けた配当所得に限られます。(※外国法人から受ける配当等は、配当控除の対象となりません)
配当控除の計算
配当控除の計算は配当の種類によって変わってきますが、一般的に上場株式を保有して得られる配当金に関しては以下の通りです。
課税総所得1000万円以下の部分
- 所得税・・配当所得の金額×10%
- 住民税・・配当所得の金額×2.8%
課税総所得1000万円超の部分
- 所得税・・配当所得の金額×5%
- 住民税・・配当所得の金額×1.4%
詳細は国税庁のサイトで確認してください。
配当所得があるとき(配当控除)|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1250.htm
※当サイトでの配当控除の詳細については別途、記事にしたいと思います。
総合課税で申告するメリット
配当金を総合課税で申告するメリットは、配当控除を利用した後の課税額がしない場合と比べて得するかどうかがポイントです。
総合課税の税率は所得税では累進課税ですから、所得が多ければ多い分に対する税率は高くなります。(住民税は一律10%)
特定口座で源泉徴収した場合や、申告分離課税の場合は配当金の税率は20.315%(所得税15.315+住民税5%)ですから、それよりも得になる税率を考えてみると良いでしょう。
総合課税では、課税される所得が330万円超695万円以下の場合では、配当控除を適用すれば17.41%となり総合課税以外で配当金を扱う場合に比べて税率が低くなる計算になります。
330万円超695万円以下の場合の計算式
- 所得税:20%(累進課税の税率)-10%(配当控除)=10%
- 復興特別所得税を含めた所得税:所得税率×102.1%=10.21%
- 住民税:10%-2.8%=7.2%
- 配当金にかかる税率:10.21+7.2=17.41%
この所得を超えると税率が20.315%を超えるため、一般的には課税所得が695万円以下の場合は税率だけ考えると、お得になると考えることが出来ます。
また所得が330万円以下の場合には所得税は10%以下になるために配当控除により所得税は0%になり、住民税の7.2%だけが配当金にかかる税率になるので、さらに安くなります。
参考:税率早見表|大和証券
http://www.daiwa.jp/seminar/study_tax/tax_rate.html
ポイント:課税所得が増えることで他への影響が出る可能性
単純に税率だけで考えれば、上記のように所得が695万円以下であれば、総合課税による申告で税金が安くなりますが、確定申告をすることで課税所得が上がることになります。
課税所得が上がることで、配偶者控除や扶養控除の判定や、国民健康保険料などに影響が出てきます。そのため、特定口座で源泉徴収ありの場合に比べて、税率が下がることによる還付はありますが、総合的に考えた場合に支払う金額が多くなる可能性もあります。
ですから、ご自身の確定申告する際は、ご自身の課税所得の上昇による影響があるかどうかを確認する必要があります。
配当金を申告分離課税で申告する場合のメリット
申告分離課税で確定申告する場合は、配当金の税率は源泉徴収される時と変わりません。ただし、株式投資による売買譲渡損失が出ている場合には、確定申告することで損益通算することが可能です。
例えば、株の売買によって50万円の損失が出ていて、配当金を10万円受け取っている場合には、特定口座で源泉徴収される税金は配当金にかかる約2万円です。
しかし、両方を申告分離課税で申告すれば、譲渡損と配当益が相殺されることで、配当金にかかる税金の還付が受け取れます。この場合は損失の方が大きいために全額還付されることになります。
申告分離課税で配当と譲渡損失を申告すれば還付が受けられる
この時に間違って総合課税で申告した場合は損益通算できない事に注意が必要です。また、こちらの場合も配当金の受け取りが譲渡損失よりも大きい時には課税所得が上がることには注意が必要になります。
【まとめ】配当金は確定申告した方がメリットがある場合が多い
特定口座の源泉徴収ありで確定申告をしない人でも、配当金に関しては確定申告で得をする場合が意外に多いということです。
日本人の平均年収を考えても、税率だけで考えれば大半の人が20.315%よりも低い税率が適用されます。また、極端に所得が低い人であれば、基礎控除なども控除の対象になります。
扶養控除や配偶者控除などを利用している人や国民健康保険加入者などでは申告しない方が良い場合もありますが、株式投資をしている個人投資家の人は一度自分が確定申告をすればどうなるかを調べてみるのが良いと思います。
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