下落相場では安く買って高く売る普通の投資では、なかなか利益が見込めません。確率的に買った時よりも安くなる可能性の方が高くなるからです。
では、逆に「売ってから買う」ことが出来る「空売り」を利用すれば良いと考える個人投資家もいるでしょう。
本記事ではそんな空売りをするなら知っておくべき知識について解説します。
空売りの仕組み
空売りは、「持っていない株を売って買い戻す」という信用取引の売買システムです。
「持っていない株を売るためには、持っている人に株を借りればいい」というのが空売りの考え方です。現物株を保有している人から借りることで、空売りの仕組みは成り立っています。
実際には、個人投資家は証券会社や証券会社を通じて証券金融会社から株を借りることになるのですが、要はどこかから株を借りて売っているということがわかれば十分です。
空売りは投資額以上に損をする可能性がある
空売りの一番怖いところは、投資資産を失うだけでなく、借金まで背負う可能性があるということです。これは普通の株の売買では絶対にあり得ないことです。
例えば100万円の株を買ったとして、会社が突然倒産したとしても、株主が被る最大の損失は100万円です。
しかし、空売りで100万円分の株を売っていた場合はどうでしょうか。
もし空売りした会社が、TOB(株式公開買付)業績の上方修正などによって株価が急騰する場合、その上昇幅に上限はありません。仮にストップ高が4日続いたとすれば、株価は一気に2倍程度まで上昇します。
株価が2倍になると元本が0になる
株価が2倍になれば空売りした100万円の株が200万円の価値になるということですから、評価損失は100万円となり投資資金は0になります。
株価が3倍になると元本が0になり元本と同様の負債を背負う
株価が3倍になればどうなるでしょうか?
株価が3倍になるなら100万円で空売りした株を300万円で買い戻すことになるわけですから、200万円の損失になり元本を失うばかりか100万円の負債を抱えることになります。
これが空売りの最大のリスクで、空売りを利用する個人投資家が絶対に知るべき知識です。
空売りには逆日歩(ぎゃくひぶ)が発生する場合がある
逆日歩(ぎゃくひぶ)も空売りする際に知っておくべき知識の一つです。逆日歩は、空売りのために調達する株が不足した場合に発生する品貸料のことです。逆日歩は空売りをした人が支払わなければいけません。
逆日歩は通常であれば、空売りした金額に対する割合は微々たるものですが、場合によっては1日で空売りした金額の数%に及ぶ場合があります。
空売りする人が多いほど、逆日歩が高くなる可能性があるという事を覚えていてください。
【まとめ】空売りには致命的なリスクが常に潜む
株価が一気に2倍になる可能性も逆日歩が1日で数%発生する可能性も、極めて低いですが0ではありません。
実際にストップ高に張り付いて株価が2倍になるような銘柄も1年に数銘柄程度はあるでしょう。株価の値動きの荒い新興市場などでは、空売りできる銘柄はほとんどありませんが、それでも空売りが出来る銘柄が、数日で株価が2倍以上になることもあり得ます。
私自身も過去には空売りをしていましたが、基本的にはデイトレードでしか利用しませんでした。今ではデイトレードでも空売りを利用することは滅多にありません。
空売りをするなという考えではありませんが、もし長期的な下落相場が続いて空売りを利用するにしても、致命的なリスクがあることは忘れないようにしましょう。