この記事ではファンダメンタルズ分析の代表格の1つである「自己資本利益率(ROE)」について解説します。
自己資本利益率は、外国人投資家が重視するファンダメンタルズ指標ということもあり、最近では日本でもPER、PBRに並ぶ重要なファンダメンタルズ指標の一つになりました。
自己資本利益率を知ることで、どれだけ効率よく資金を利用しているかを判断できるため、経営能力を判断する指標の一つとして利用することが出来ます。
自己資本利益率(ROE)とは?
自己資本利益率(ROE)は企業の収益効率を測る指標の一つで、ROEとは「Return on Equity」の略称です。
「自己資本」、つまり「株主による資本」を基準に考えて、どれだけの利益を生み出せたかというのを数値化したものが自己資本利益率です。
自己資本利益率(ROE)の計算式
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- 当期純利益÷自己資本(株主資本)×100%
- 一株当たり利益(EPS)÷一株当たり純資産(BPS)×100%
- 株価収益率(PER)÷純資産倍率(PBR)×100%
例えば、下のような2社の業績を比較してみましょう。
- A社:純利益2億円÷純資産10億円×100=自己資本利益率20%
- B社:純利益1億円÷純資産10億円×100=自己資本利益率10%
この場合、純資産に対しての利益率はA社はB社に比べて2倍になることから、A社の方が資金効率が良い会社というのがわかります。
自己資本利益率(ROE)からわかること
自己資本利益率では、自己資金をどれだけ効率よく運用できているかがわかります。
投資判断をする上で、投資対象の会社がどれだけ効率よく資金を運用出来ているかは、重要なポイントになります。
資金が有り余っていても十分に利用出来ていない会社よりも、資金が少なくても十分に利用し利益に繋げる会社の方が経営能力が高いという判断になるのは当然です。
逆に資金は潤沢にあるのに、それを活かせていない利益しか出せないようであれば、企業の成長余地も小さく、投資対象としての魅力が少ないと言えます。
外国人投資家が重視する指標
自己資本利益率は古くから投資指標としてありましたが、日本で注目されるようになったのは最近(私個人の感覚では2010年頃)の話です。
それまでは株価収益率(PER)や純資産倍率(PBR)が一般的に利用されるファンダメンタルズ分析の指標でした。投資の勉強をするために本でも、ファンダメンタルズ分析に関しては、その時期まではPER、PBRに関する内容が多かった印象があります。
しかし、海外投資家が自己資本利益率(ROE)を重視し、効率よく資本を利用する会社に注目する傾向が高いことから、日本市場でも自己資本利益率が注目されるようになりました。
日本の株式市場とはいえ、海外投資家の動向により大きく相場が変動するような市場ですから、この流れは自然ですね。
自己資本利益率(ROE)の目安
自己資本利益率(ROE)への注目度から企業側も意識するのは当然です。
年度や業種によっても、平均ROEは変わってきますので、判断する時には業種別に数値を参考にする必要があるでしょう。
2019年1月を目安に考えた場合、日本証券所グループのデータを参考にすると、東証一部全体のPER、PBRの平均値はそれぞれ15.4と1.1です。
「ROE=PER÷PBR×100」で計算すると自己資本利益率の平均は7.14%となります。
ですから、それを基準にするとROEが10%を超えると優秀、7%で平均と考えることが出来そうです。
自己資本利益率(ROE)の目安は7%が平均、10%以上で優秀
参考記事:その他統計|日本取引所グループ
自己資本利益率(ROE)の注意点
自己資本利益率(ROE)で注意するのは、負債が大きい場合でもROEが高くなる傾向にあるということです。
ROEは自己資金と利益率の関係性を見る指標であるために、負債(他人資本)の規模は、考慮されていません。
積極的に銀行などから借り入れを行って経営している場合にも、資本が多くなるわけですから当然利益も多くなります。
新興市場では創業年数の少ない企業も多く、自己資本が少なく先行投資のために借入金が多いために、ROEが高くなる傾向があるのは当然ですが、同時に注意が必要になると言えます。
負債が多すぎる場合には、財務的には不安定になりやすく経営が傾いた時に倒産リスクが大きくなる可能性があるからです。
負債が多くても自己資本利益率(ROE)は高くなりがち
【まとめ】効率の良い資金利用をしているかを見極める
資金効率を見ることは、優秀な企業がどうかを見極めるポイントの一つです。
そのため、自己資金をどれだけ効率よく利用出来ているかを表す自己資本利益率(ROE)は、最近では非常に注目されるファンダメンタルズ分析の指標になりました。
PER、PBRから判断して割安なのに株価が上がらない会社では、この自己資本利益率が低い場合もあります。それだけ重要な指標ですから、投資をする上では欠かせない知識の一つだと思います。
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