「資産の部」「負債の部」を見ると、それぞれに「流動資産(負債)」と「固定資産(負債)」という項目があることに気づきます。「流動」と「固定」とはどういう意味でしょうか?
「流動資産(負債)」と「固定資産(負債)」
- 流動資産
- 資産のうち1年以内に現金化されるものを指します。現金や預金はもちろんですが、販売用の商品や売掛金(顧客から回収するお金)も通常は流動資産にあたります。
- 流動資産の例:現金・預金、売掛金、有価証券、棚卸資産、前渡金、前払金などで1年以内に現金化できるもの
- 固定資産
- 資産のうち1年以内に現金化されない資産を指します。土地や不動産、機械設備などがあたります。
- 固定資産の例:建物、機械装置、車両運搬具、工具・器具・備品、土地、営業権、特許権、借地権、商標権、長期間保有される投資有価証券など
- 流動負債
- 1年以内に支払わなければならない債務(借金)のことを指します。返済期限が一年以内の借金や買掛金などがあたります。
- 流動負債の例:買掛金、支払手形、短期借入金、前受金など
- 固定負債
- 支払期限が1年を超える債務(借金)を指します。長期借入金などがあたります。
- 固定負債の例:。社債、長期借入金、退職給付引当金など
簡単に言うと、「流動」とは一年以内、「固定」とは一年を超える期間ということです。では、貸借対照表での流動と固定の振り分けでは何を読み解くことができるのでしょうか?
下の二つの貸借対照表を参考に考えてみましょう。
先の記事で説明したように「資産=負債+純資産」ですから左右の金額は10,000,000(単位:千円)となります。また、流動と固定の説明のため純資産の項目はA、B両社ともに2,000,000(単位:千円)としています。ここで両社の大きな違いといえば、流動資産と固定資産の割合です。(ここから単位割愛)
- A社では「流動資産8,000,000、固定資産2,000,000」に対して「流動負債2,000,000、固定負債6,000,000」
- B社では「流動資産2,000,000、固定資産8,000,000」に対して「流動負債4,000,000、固定負債4,000,000」
注目してほしいのは流動資産と流動負債の額です。A社では流動資産、つまり一年以内に現金化できる流動資産が8,000,000あるので1年以内に返済すべき流動負債の2,000,000は余裕で賄えます。
それに比べてB社は流動資産2,000,000に対して流動負債が4,000,000と、今ある流動資産だけでは1年以内に返済すべき流動負債を賄う事ができません。
つまり会社にお金(現金・預金)がなくなる可能性もあるのです。お金がないということは、1年以内に返済すべき流動負債を返済することが不可能になります。
資産(流動資産+固定資産)は十分にあるのに、お金がないという状態は企業にとって健全とは言えません。当然、会社も固定資産の売却や、返済の遅延、追加融資など対応をすることになりますが、A社に比べるとやはり安定性は低いと言えます。
この流動資産と流動負債との割合は、会社の安定性を測るのに非常に有効で、「流動比率」とも呼ばれます。
流動比率=流動資産÷流動負債×100
流動資産の割合が大きいほど、流動比率も大きく(安定性がある)なりますので、投資先を選ぶ時の基準の一つとして用いると参考になると思います。
では次に流動資産と流動負債の勘定科目について詳しく解説してみましょう。

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