信用取引には「信用倍率」と「貸借倍率」という用語が出てきます。本記事では、「信用倍率」と「貸借倍率」の違いについて解説します。
信用倍率と貸借倍率
信用倍率、貸借倍率は両方とも、信用取引の「買い」と「売り」のバランスを示した数字です。
計算式ではそれぞれ次のようになります。
- 信用倍率=信用買い残÷信用売り残
- 貸借倍率=融資残高÷貸株残高
信用倍率(貸借倍率)が1よりも大きければ買い残の方が多く、1よりも小さい場合には売り残の方が多いことを示します。
倍率が大きいほど、その銘柄が上昇すると考えている投資家が多く、倍率が小さいほど下落すると考えている投資家が多いということになります。
信用倍率と貸借倍率の違い
信用倍率と貸借倍率の違いは大きく2つあります。
信用倍率と貸借倍率は算出に用いる信用取引の種類が違う
1つは、倍率を算出するための信用取引の種類の違いです。
信用取引には証券取引所が定めた銘柄を売買する「制度信用取引」と、各証券会社に銘柄やルールが定める「一般信用取引」の2種類があります。
信用倍率は制度信用取引と一般信用取引の両方から倍率を算出しますが、貸借倍率では制度信用取引のみで倍率を算出します。
信用倍率と貸借倍率は出るタイミングが違う
もう一つは、信用倍率と貸借倍率に用いる数値のタイミングです。
信用倍率は前週末時点での信用取引の残高から更新され、借倍率は制度信用取引の残高を毎日更新しています。
信用倍率と貸借倍率の違いによる特徴
信用倍率は、制度信用取引と一般信用取引のデータから算出していますので数字の信頼性はありますが、前週のデータになるために即効性はありません。
一方で貸借銘柄は、制度信用取引のデータのみで算出されていますので信用倍率よりも数字の信頼性は劣りますが、毎日更新されるので即効性はあります。
それぞれの特徴の違いから信用倍率と貸借倍率を使い分けたらいいのでしょうか。
信用倍率の利用例
信用倍率は、制度信用取引と一般信用取引の信用残から算出されるため、貸借倍率よりも信頼できる倍率になります。
そのため、中長期投資で保有する銘柄の信用取引のバランスを見るためには、信用倍率を参考にすることが一般的です。
信用取引のデータが著しく変化しない場合であれば、前週のデータでも問題ありませんので、貸借倍率より正確なデータから算出される信用倍率の方がメリットになります。
貸借倍率の利用例
貸借倍率は、制度信用取引のみのデータになるために一般信用取引のデータはわかりませんが、毎日更新されていますので即効性があります。
そのため、好材料や悪材料によって株価が激しく変動する銘柄などを売買する際には、信用倍率よりも即効性のある貸借倍率を参考にするのが一般的です。
つまり、デイトレードや短期投資の場合には前週末のデータである信用倍率よりも貸借倍率を参考にする方が効果的です。
制度信用取引の残高は「日本証券金融」のサイトで毎日更新しています。