約定日と受渡日【株を売買する日と株主になる日の違い】

約定日と受渡日の関係と注意点について解説します

株式投資では、「約定日(実際に売買があった日)」の2営業日後に「受渡日(名義上株券が受け渡される日)」があります。(2019年7月12日以前は3営業日)

この約定日と受渡日の違いは、株式投資をする上で時には重要なポイントになることがあります。

今回は「約定日」と「受渡日」の違いや注意すべきポイントについて解説します。

約定日と受渡日の関係

「約定日」とは、”実際に”株式投資で株を売買した日のことです。それに対して、「受渡日」は”名義上で”株式を購入者に譲渡される日のことです。

  • 約定日・・株を売買した日
  • 受渡日・・名義上株の譲渡がある日

約定日と受渡日の関係は、証券用語の解説では以下のように表現されています。

約定日から「起算」して3営業日後が受渡日

これをわかりやすく言えば、「約定日の2営業日後が受渡日」ということになります。「起算」とは、その日を含めてということですので、一般的にはあまり使いませんね。

祝日のない週の月曜日に株が約定すれば、2営業日後の水曜日が受渡日になります。

祝日のない月曜日が約定日の場合
月曜日 火曜日 水曜日 木曜日
約定日 1営業日後 受渡日(2営業日後) 3営業日後

約定日と受渡日の間に土日や祝日がある場合

約定日と受渡日でカウントされるのは営業日だけのため、土日や祝日は無視して考えることが出来ます。

例えば、祝日のない普通の木曜日が約定日の場合には以下のように、翌週の月曜日が受渡日になります。

祝日のない木曜日が約定日の場合
木曜日 金曜日 土曜日 日曜日 月曜日
約定日 1営業日後 休日 休日 受渡日(2営業日後)

もし、月曜日が祝日だった場合には、受渡日はもう1日ずれて、翌週の火曜日が受渡日になります。

木曜日が約定日で翌週の月曜日が祝日の場合
木曜日 金曜日 土曜日 日曜日 月曜日 火曜日
約定日 1営業日後 休日 休日 休日 受渡日(2営業日後)

この約定日と受渡日の関係が株式投資をする上で、重要なポイントになるのは次のような理由があるからです。

約定日と受渡日が影響するイベント

株式市場でこの約定日と受渡日の違いが影響するイベントは以下の3つです。

  • 配当金や株主優待の権利日
  • 年末の税金に関する調整
  • 空売りによる逆日歩(ぎゃくひぶ)の計算

配当金や株主優待の権利日

株式投資では株を保有していると年に1,2回程度、配当金や株主優待を受け取ることができます。

実施される回数や有無は企業によって違いますが、配当金や株主優待を貰いたい場合には、「特定の日」にその企業の株主でいる必要があります。

その「特定の日」を権利確定日と言い、決算日や中間決算日が権利確定日になるのが一般的です。例えば、3月末決算企業の場合は、3月31日が決算日であり権利確定日になります。ちなみに中間決算は9月30日ですね。※月末が休日なら前営業日が権利確定日

では、3月末決算の企業の期末配当と株主優待を手に入れるには、いつ株を保有していればいいのでしょうか?

期末配当と株主優待を貰う条件は、「決算日の大引けに株主名簿に名前が載っていること」です。つまり受渡日である3月31日に株主名簿に名前が記載されることが配当金や株主優待を受け取る条件です、

受渡日から約定日を逆算してみましょう。

3月31日が金曜日だった場合には、3月28日の火曜日を約定日の期限になり、その日の大引けに株を保有していなければいけません。

ちなみに、この約定日のことを「権利付最終日」や「権利付最終売買日」などと呼びます。

3月末決算企業の配当取り
29(水) 30(木) 31(金)
約定日 1営業日後 受渡日(2営業日後)
権利付最終日 配当権利落ち日 権利確定日

約定日ベースでは配当を貰えるかどうか決定する日を以下のような呼び方をします。

  • 権利付最終売買日・・大引けに株を持っていると配当が貰える日
  • 権利落ち日・・株を売却しても配当等を貰える日

詳細記事 「権利確定日」と「権利付き最終日」、「権利落ち日」の違いと仕組み

年末の税金に関する調整

株式投資の利益にかかる税金は、1月1日から12月31日までの損益をもとに確定します。

年末最後の市場が開いている日を大納会(だいのうかい)と言いますが、12月30日(土日の場合は前営業日)が大納会にあたります。

ただ、大納会に約定した株の損益は、受渡日ベースでは2営業日後であるため翌年分の損益として見なされます。ですから、税金調整のための売買をするのであれば、受渡日ベースで年内に取引する必要があります。

大納会に約定した株の損益は翌年分として見なされる
税金の調整が有効な場合

例えば、株の売買益が年間で100万円出ていたとします。その場合には、売買益にかかる税金は約20万円(20.315%)です。

しかし、その状態で40万円の含み損があり、その40万円の損失を確定すれば、売買益は「100万円-40万円=60万円」と少なくなります。

そういった場合に、含み損を抱えた株を売却して損失を確定するなら、大納会に売却しても損益が相殺されません。必ず受渡日ベースで年内に売却しなければいけません。

2022年の大納会と受渡日の関係

2022年12月の大納会は12月30日金曜日です。この日を受渡日にするためには、2営業日前の12月28日を約定日として、損失を確定する必要があります。

詳細記事 【2019年-2020年】年末年始の株式投資の税金対策はどうるすべきか

空売りによる逆日歩(ぎゃくひぶ)

逆日歩とは 、「制度信用取引で貸株残が増加し、売り建てのための株が不足した時に売り方が支払うコスト」のことです。

簡単に言えば、空売りした人が株の調達コストを負担する仕組みです。

例えば、制度信用取引で以下のような買い残と売り残があったとしましょう。

  • 買い残:10万株
  • 売り残:30万株

このような状況では、空売りするための株を日本証券金融が手配するのが困難になるため、入札形式で株の調達を行います。そういった入札にかかるコストを売り方が負担するのが逆日歩です。

この逆日歩の特徴は、「逆日歩は営業日だけでなく休日も発生する」ことです。つまり、「土日や祝日を跨いで株を空売りした場合は、その分も逆日歩が発生する」ということです。

この逆日歩も約定日ではなく受渡日ベースになるので、金曜日に株を空売り(約定)したとしても、土日の分はかかりません。

受渡日ベースで考えると「水曜日に株を空売りした場合には、土日2日分の逆日歩も余計に発生する」ことになります。

つまり、逆日歩の計算は次のような理屈です。

  • 約定日が水曜日の場合、受渡日で金曜日になる
  • 受渡日が金曜日で持ち越す場合、土日を跨ぐことになる
  • 3日分の逆日歩が発生する

そのため、逆日歩が高額になるような銘柄を水曜日に空売りするのは、普段よりもリスクが高くなることに注意しましょう。

詳細記事 逆日歩(品貸料)とは【調べ方と計算方法を解説します】

約定日と受渡日の期間は2019年7月16日に1日短縮された

元々ややこしい約定日と受渡日の関係ですが、2019年の7月16日約定分よりも前は、受渡日は約定日の3営業日前でした。

そのため、この記事は2019年7月16日以降に適用されるルールとして解説していますが、それ以前とは1日ズレていることに注意してください。

  • 2019年7月12日(金)以前:約定日から起算して4営業日後が受渡日
  • 2019年7月16日(火)以降:約定日から起算して3営業日後が受渡日

※変更後に記事は修正していますが、記事によっては見落としもあるかもしれませんのでご了承ください。

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