制度信用取引と一般信用取引の違い【表と図解による解説】

制度信用取引と一般(無期限)信用取引の違い

信用取引とは、証券会社に預けた現金や株を担保にして、約3倍の額の株を売買できる制度です。

証券会社で信用口座の開設手続きをすれば利用出来ますが、その種類や仕組みは投資初心者には少し複雑です。

今回は、『制度信用取引』と『一般(無期限)信用取引』の2つの信用取引の違いについて詳しく説明します。

制度信用取引とは?

制度信用取引とは、証券取引所が定めたルール(制度)で行われる信用取引です

制度信用銘柄は証券取引所によって、買い建て、売り建ての両方ができる『貸借銘柄』と、買建のみできる『信用銘柄』に分類されています。

  • 貸借銘柄:買い建てと売り建てが可能
  • 信用銘柄:買い建てのみ可能
  • 買い建て:信用取引で新たに株を買うこと
  • 売り建て:信用取引で新たに株を売ること(空売りともいう)

制度信用取引の返済期限は半年

また、制度信用取引の大きな特徴として、新規で建て玉を持った日(建日)から半年以内に返済しなければいけません。

制度信用取引の期限

もし返済期限までに返済をしなければ、証券会社により自動的に成行注文などで売買されてしまうので注意しましょう。

制度信用取引で返済期限を過ぎる場合は「現引き」する

制度信用取引で買建玉が返済期限で自動的に決済されないようにするには「現引き」を利用します。

現引きは信用買いした株を現物株に切り替える方法です。わざわざ建玉を決済してから買い戻す手間が省けるので、半年を超えて保有したい建玉がある場合には効果的な手段です。

一般(無期限)信用取引とは?

一般信用取引は証券会社によってルールが定められた信用取引です。

採用されている銘柄や、『貸借銘柄』か『信用銘柄』も証券会社毎に独自のルールで選別されています。

一般(無期限)信用取引は返済期限がない

一般信用取引は証券会社が独自のルールで行う信用取引のため、返済期限が設けられていないのが特徴です。

そのため、無期限信用取引とも言われ、返済期限を気にしない取引が出来るのも大きな特徴になっています。

一般(無期限)信用取引の期限

最近は期間付きの一般信用取引も

ただし、最近では一日信用取引や短期信用取引(2週間など)の期間が定められた一般信用取引も提供されているため、「一般信用取引=無期限信用取引」は少し古い考え方かもしれません。

制度信用取引と一般信用取引の違い

以下の表は、制度信用取引と一般信用取引の違いをまとめたものです。

特徴 制度信用取引 一般信用取引
ルールの設定 証券取引所 証券会社
返済期限 6か月 原則無期限
取り扱い銘柄の選定 証券取引所 証券会社
逆日歩(品貸料) 発生する 発生しない
金利(買い建て時) 2%台 2%後半~3%前半
貸株料(売り建て時) 1%台前半 2%前後

信用取引による取り扱い銘柄数の違い

制度信用取引では、証券会社が一定の基準を満たした銘柄のみを取り扱うために、一般信用取引に比べて、やや厳しいルールが設けられています。

一方で、一般信用取引は証券会社ごとに取り扱う銘柄が違うために、証券会社によって取扱銘柄が変わります。

また、どちらの信用取引にしても、信用銘柄と貸借銘柄の違いがあるため、信用取引で売買したい銘柄がどちらの銘柄か取引の前に確認する必要があります。

  • 制度信用取引の取り扱い銘柄を確認→日本証券金融
  • 一般信用取引の取り扱い銘柄を確認→利用する証券会社

制度信用取引のみ発生する逆日歩(ぎゃくひぶ)

逆日歩(ぎゃくひぶ)は品貸料(しながしりょう)とも言われ、制度信用取引で売建玉が買建玉より極端に多い場合に、売り方が負担する株の調達コストです。

売建した銘柄に逆日歩が発生した場合は、売り建て数に応じた負担金を支払う必要があります。逆に買建した銘柄に逆日歩が発生した場合は、逆日歩を受け取ることができます。

逆日歩と信用取引の種類
種類 買建 売建
制度信用取引 貰える 支払う
一般信用取引 貰えない 支払わない

通常はそれほど大きな額にはなりませんが、稀に1日持ち越すだけで逆日歩が株価の数%になる事もあるので売り建てする銘柄によっては注意が必要です。

しかし逆に、買い建てをしている銘柄に逆日歩が発生した場合は、逆日歩を受け取る事が出来ます。一概にメリットデメリットとは言えませんが、制度信用取引をする以上は逆日歩は考慮する必要があるでしょう。

逆日歩の発生する銘柄の特徴

逆日歩は、空売りのために手配できる株が不足した時に生じます。

そのため、制度信用取引による買い残が減少し、売り残が増加することが逆日歩の発生条件と言えます。

例えば、短期間で株価が大きく上昇した銘柄では、過熱感から空売りする人と買建玉を利確する人が増えることから、逆日歩が発生しやすい状況になります。

制度信用取引と一般信用取引の金利と貸株料の違い

返済期限や逆日歩ある制度信用取引よりも、一般信用取引の方が想定外のリスクは起こりにくいのでは・・と個人的には思います。

しかし、制度信用取引と一般信用取引では金利と貸株料が違うことも考慮しなければいけません。

  • 金利:信用取引の買い建てした金額にかかる
  • 貸株料:信用取引の売り建てした金額にかかる

証券会社によって金利は異なりますが、制度信用取引よりも一般信用取引の方が金利や貸株料は高くなる傾向があります。

しかし最近では、SBI証券は制度信用取引も一般信用取引も同じ利率にしているようですので、利用したい証券会社ごとに調べてみてください。

SBI証券の場合の金利と貸株料の違い(年率)
SBI証券 制度信用取引 一般信用取引(無期限)
金利 2.8% 2.8%
貸株料 1.1% 1.1%

利率が異なる場合には、わずかコンマ数%の違いでも、1000万円を信用取引で買い建てをしていると、半年で約15,000円の違いが発生することになります。どちらの信用取引を利用するかは取引する状況によって選択しましょう。