株式投資をしていると気づかない内に、株式取引の禁止行為を犯している可能性があります。
その中でも株価を意図的に操作する「相場操縦的行為」は、「風説の流布」と同様に個人投資家がやってしまう可能性がある禁止行為です。
本記事では、株の売買における禁止行為である「相場操縦的行為」について解説します。
相場操縦的行為とは?
相場操縦的行為とは、本来公正な価格形成が行われるべき相場を、作為的に歪める行為です。
株価操縦的行為は、法令で禁止されていて違反した場合には罰則が科せられるケースもあります。
相場操縦的行為やそれに準ずる取引は主に次のようなものです。
- 見せ玉
- 仮装売買
- 馴合売買
- 終値関与
- 買い上がり(売り崩し)
- 作為的相場形成
- 売買高関与
- 株価固定
- 高値安値形成
見せ玉
見せ玉とは「売買を成立させる意図がない大量の注文の発注・取り消し・訂正を繰り返す行為」のことです。
見せ玉の例
下の板は買い板に見せ板を発注している例です。
売数量 | 株価(円) | 買数量 | A氏の買注文 |
---|---|---|---|
600株 | 105 | ||
1000株 | 104 | ||
800株 | 103 | ||
300株 | 102 | ||
600株 | 101 | ||
100 | 4000株 | 3000株 | |
99 | 3000株 | 3000株 | |
98 | 5500株 | 5000株 | |
97 | 4800株 | 4000株 | |
96 | 6000株 | 5000株 |
このように、売り注文よりも極端に多い買い注文を並べることで、株価が下落しにくい状況を意図的に作り出しています。
仮装売買
特定の株式の売買が活況に行われていると他の投資家に誤解させ、取引を誘引することを目的とした売買です。
仮装売買とは、同一人物が同一時刻、同一価格で買い注文と売り注文を約定させる行為のことです。
仮装売買の例
下の表はA氏による仮装売買の注文が約定した時の例です。
売数量 | 株価(円) | 買数量 |
---|---|---|
600株 | 105 | |
1000株 | 104 | |
800株 | 103 | |
300株 | 102 | |
600株 | 101 | |
A氏の10000株の買い注文 | 100 | A氏の10000株の売り注文 |
99 | 500株 | |
98 | 400株 | |
97 | 500株 | |
96 | 1000株 | |
95 | 300株 |
10000株の注文を約定させることで出来高が極端に増加し、売買が活況であるように偽装しています。このような取引が仮装売買に当たります。
馴合売買
馴合売買は仮装売買を複数人で行う行為です。
仮装売買では、A氏が一人で買いと売りの注文を出し約定させていましが、馴合売買ではA氏とB氏(またはそれ以外の人物)で売買を偽装します。
終値関与
終値関与は「立会時間終了間際の発注で、直近株価より高い又は安い価格で終値を形成させる行為」のことです。
始値や終値は相場形成への影響力が大きく、特に終値は翌日の基準値になるため、作為的に終値をコントロールする行為は株価操縦的行為と言えます。
買い上がり(売り崩し)
買い上がり(売り崩し)は、特定の株式を意図的に高く(安く)する事で、何らかの思惑で相場が上昇または下落していると、他の投資家に誤解させ、取引を誘引する行為です。
出来高の少ない銘柄は、個人投資家の資金でも株価を大きく変動させることも可能であることから、投資初心者がやってしまいがちな行為と言えます。
作為的相場形成
作為的相場形成とは、他の投資家の取引を誘引する意図がなかったとしても、取引の内容から相場を作為的に形成したものと客観的に認められる取引のことです。
作為的相場形成になる事例
例えば、株価下落によって信用取引の証拠金が不足し追証がでる可能性があったために、自らが終値付近で買い上げ、株価を上昇させることがこれに当たります。
※他の投資家に対して株価の上昇を誘発する意図はありませんが、株価を自分の都合により不自然に引き上げることが禁止行為
売買高関与
売買高関与とは特定の銘柄の1日の出来高に対する、自身の出来高の割合が高い状態を継続する行為のことです。
相場操縦的な意図がなくても、出来高は価格形成に大きな影響を与える要素ですので、あまりに極端な買い集めなどは注意する必要があります。
株価固定
株価固定とは、株価の変動を意図的に抑える目的の売買行為のことです。
例えば、大量の買い注文と売り注文を近い範囲で出すことによって、その範囲内で株価の変動が収まるように仕向けます。
高値安値形成
高値安値形成とは、株価を高く又は安くすることを目的として、当日の高値又は安値を付ける取引を反復継続して行ったり、複数日にわたり高値又は安値を付ける行為を繰り返すような取引のことです。
株価操縦的行為での罰則
これらの相場操縦的行為による罰則は「金融商品取引法」で定められています。
※金融商品取引法は、有価証券の発行や売買などの金融取引を公正なものとし、投資家の保護や経済の円滑化を図るために定められた法律
SBI証券からの引用になりますが、金融商法取引法の中では次のような罰則規定があります。
不公正取引(相場操縦的行為及び風説の流布等)を行った者は、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金(又は懲役と罰金の両方)【197条1項5号】
財産上の利益を得る目的で、不公正取引行為により相場を変動又は固定させたりして、その相場により取引を行った者は、10年以下の懲役及び3,000万円以下の罰金がかけられます【197条2項】
相場操縦的行為にならないための注意点
一般の個人投資家が相場操縦的行為に該当しないためには、次のポイントに気をつけましょう。
- 気配値や出来高と比べて極端に多い注文を出さない
- 出来高と自分の約定した株数の割合に気を付ける
- 継続的に終値に関与する取引をしない
- 自己売買をしない
また、私が利用するSBI証券では、株価操縦などに該当する恐れがある場合には警告メッセージを表示されます。※例えば以下のようなメッセージ
相場操縦的行為は当事者だけでなく証券会社にとっても避けたい取引だからです。
他の証券会社でもそういう相場操縦的行為をしないように働きかける機能やメッセージがありますので、警告文が出た時は無視しないで、自分の取引が相場操縦的行為に該当しないか再確認しましょう。