信用取引の特徴と注意点【株式投資】

信用取引は、証券会社に預けている現金や有価証券を担保にして、株を売買する仕組みです。

信用取引では、現物取引の約3倍の金額の取引が出来る事から、資金が少ない投資家や短期売買を目的としたトレーダーに利用されています。

本記事では信用取引の特徴や注意点について解説します。

信用取引の主なメリット

株の売買は自己資金で行うのが原則で、その売買を「現物取引」と言います。対して、証券口座内の現金や株式などを担保に株を売買することを「信用取引」と言います。

信用取引には次のようなメリットがあります。

信用取引は担保とした現金や株式の3倍の取引ができる

信用取引の大きな特徴の一つは、現金や有価証券(株式や投資信託)を担保として、その評価額の約3倍の取引が出来ることです。

例えば、証券口座に投資資金として現金を100万円預けていれば、約300万円の取引が可能になります。

また、保有株や投資信託も担保にすることができるため、現物株で長期投資をしながら短期投資を信用取引ですることが可能なため、投資効率が向上します。

信用取引では持っていない株を売る事ができる

もう一つの信用取引の大きな特徴は「空売り」ができることです。

空売りとは、保有していない株を借りることで「売ってから買い戻す」という普通とは逆の売買ができる制度です。

株式相場には上昇と下落の波があります。下落相場の時には、上昇より下落する株が多いことから、空売りによって下落する銘柄を売買できるも信用取引の大きなメリットです。

空売りのイメージ

信用取引の主なデメリット

逆に、信用取引には次のようなデメリットがあります。

信用建玉に金利や貸株料がかかる

信用取引は現金や株式を担保にしていますが、保有株(買建玉)には金利がかかり、空売りしている株(売建玉)には貸株料がかかります。

一般的なネット証券の場合、金利は保有株の約定金額に対して年間で3%前後、貸株料は空売りした株の約定金額の1~2%程度かかります。

100万円の買建玉なら年間約3万円、売建玉なら年間1万円超の経費がかかります。

制度信用取引は半年以内に返済しなければならない

制度信用取引では、半年以内に決済をしなければいけません。自分で決済しない場合には、証券会社が自動的に反対売買を発注することになるので注意が必要です。

※一般信用取引では、半年の期限はありません。

株主優待は貰えない

信用取引では配当金は貰えますが、株主優待は貰えません。

株主優待を目的に投資をするのであれば、信用取引ではなく現物取引で株を買いましょう。

制度信用取引の売建玉には逆日歩がかかる場合がある

制度信用取引で買建玉より売建玉の比率が大きい銘柄では、売建玉に対して「逆日歩(ぎゃくひぶ)」が発生する場合があります。

逆日歩は貸株料と比べて高額になる可能性があるので、デイトレード以外で売り建玉が多い株を空売りするのは避けた方が良いでしょう。

信用取引の種類

信用取引は制度信用取引と一般信用取引に分類することが出来ます。

制度信用取引

制度信用取引は、証券取引所が指定する銘柄を対象とした信用取引です。

制度信用取引で売買できる銘柄はさらに、信用買いと信用売りの両方できる「貸借銘柄(たいしゃくめいがら)」と、買建のみできる「信用銘柄」に分類されます。

制度信用取引の有効期限は半年

制度信用取引では建玉を6カ月以内に決済しなければいけません。

つまり制度信用取引で買った銘柄は半年以内に売却を、空売りした銘柄は半年以内に買い戻しをする必要があります。

もし、半年以内に決済しなければ、証券会社によって自動的に建玉を返済注文されることになります。

一般信用取引(無期限信用取引)

一般信用取引は、証券会社が独自に採用銘柄やルールを設定した信用取引です。そのため、売買できる銘柄は信用取引口座を開設している証券会社ごとに違います。

また、一般信用取引は無期限信用取引とも呼ばれ、制度信用取引とは違い、原則として返済期限はありません。

一日信用取引と短期信用取引

一般信用取引の中には、証券会社によっては「一日信用取引」や「短期信用取引」などの一般信用取引制度もあります。

これらは、証券会社によって銘柄や建玉を保有できる期間などが異なります。

委託保証金と追証

信用取引は、担保をいれることで資産の約3倍の売買ができる制度です。その担保について投資家が注意すべきルールがあります。

委託保証金とは

信用取引で用いられる現金や有価証券のことを「委託保証金」とよびます。※証拠金ともいう。この委託保証金と建玉の比率を「委託保証金率」と言います。

委託保証金率=建玉÷委託保証金×100(%)

また、信用取引をするのに最低限必要な委託保証金を「最低委託保証金」と言い、建玉に対して最低限必要な委託保証金率のことを「最低委託保証金率」と言います。

  • 最低委託保証金・・信用取引をするのに最低限必要な委託保証金
  • 最低委託保証金率・・建玉に対して最低限維持しなければいけない委託保証金の比率

最低委託保証金(率)を下回ると追証が発生する

信用取引で一定水準まで含み損が膨らみ、最低委託保証金や最低委託保証金率を下回ると「追証」が発生します。追証が発生した場合、証券口座に追加の保証金が必要になります。

追証はどれくらいで発生する?

追証が発生する条件は、証券会社によって若干の違いがありますが、私が利用しているSBI証券では、委託保証金率が30%を下回った場合に、証券口座に追加で保証金を入れる必要があります。

また、最低委託保証金が30万円なので、証券口座内の保証金が30万円以下になった場合にも、信用取引をするなら追証が必要になります。

もし追証を入れなかったら?

期限内に追証を入れなかった場合には、証券会社により建玉の任意決済がおこなわれます。

そして、建玉を決済した時に担保(証券口座内の資産)がマイナスになれば、そのマイナス分は当然、補填しなければいけません。

信用取引の効果的な利用法

信用取引は、自己資金の3倍の取引ができるため、投資資金が少ない人に有難い制度です。私自身も資金が少ない時には信用取引を利用していました。

ただし、投資資金以上の投資が出来るということは、それだけリスクが高くもなります。

リスクを抑えて効率的に信用取引を利用するにはどうすれば良いのかを解説していきます。

信用取引は短期投資で利用する

信用取引の手数料は現物株の取引手数料に比べて安くなる傾向があります。

取引手数料が安くても金利や貸株料が発生するために、証券会社にとっては中長期的には利益が大きくなるからです。

ただ、デイトレードや数週間程度の短期投資であれば、金利や貸株料は微々たるものなので、投資家にとっては現物株式で売買するよりも手数料が安くなります。

短期投資で取引するには信用取引の方が現物取引よりも手数料削減になる場合が多いでしょう。

信用取引の最も効果的な利用法は、中長期保有の現物株を担保にして、短期の投資を信用取引で行う事です。

空売りは多用しない

空売りは信用取引のメリットにもなりますが、致命的なリスクになる可能性もあります。

例えば、100万円で空売りした株が300万円なれば、200万円の含み損になります。投資元本を大きく超える損失です。

そのため、空売りするなら特に長期投資は禁物です。あくまで短期投資に限定し、致命的なリスクを避けることが信用取引を上手に利用するポイントです。