ファンダメンタルズ分析では、業績や財務と株価を比較して投資判断を行います。今回はファンダメンタルズ分析の代表格である株価収益率(PER)の計算方法と効果的な使い方について解説します。
株価収益率(PER)とは?
証券会社や四季報などで企業情報を調べると、「PER12.5倍」や「株価収益率27.3倍」などと記載されているのを見かけます。
株価収益率(PER:price earnings ratio)はファンダメンタルズ分析でも代表的な指標の一つで「株価と純利益の関係」を表した指標です。
株価収益率(PER)の計算方法は以下の通りです。
※一株当たりの当期純利益=当期純利益÷発行済み株式数
一言で表現すると、PERは「今の株価は会社の純利益何年分か」を表した指標です。
売上高 | 品物やサービスを提供し得た代金の総額 |
売上総利益 | 売上高-売上原価 |
営業利益 | 売上総利益-販売費及び一般管理費 |
経常利益 | 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用 |
当期純利益 | 経常利益+特別利益-特別損失-法人税・住民税 |
株価収益率(PER)が低いと株価は割安
株価収益率(PER)は数値が低いほど、株価に対する収益性が高く割安と判断できます。※但し、マイナスになると意味合いが逆になるので注意
例えば、PER20倍の会社とPER10倍の会社を「株価収益率(PER)だけ」で比較すれば、PER10倍の会社の方が割安と判断できます。
株価収益率(PER)を効果的に利用するポイント
株価収益率だけで考えれば、低いほど株価に対する収益性が優れていると言えますが、総合的な投資判断にはPERの数値だけでなく、次の条件も考慮して判断する必要があります。
業種によって株価収益率の水準は違う
まず第一に注意するべき事は、業種によってPERの平均が違うという事です。
日本証券取引所グループが発表している統計資料によると2022年9月の東証プライム市場の業種別PERでは石油・石炭製品ではPER3倍、情報・通信業では22.1倍になっています。また東証プライム市場の総合ではPER14.2倍です。
このPERの差は、業種全体の成長性や財務状況などに違いがあるためです。そのため、業種が違えば株価収益率の基準も変わります。
つまり、株価の割安・割高を判断するためには、同業種の平均PERを比較することも大切です。PERが低いだけで割安だと判断することは軽率です。
株価収益率(PER)は原則として今年度の業績で算出されている
PERは会社が発表する今年度の業績予想を基にして算出されます。
本年度の業績予想は一般的には、前年度の決算発表時に併せて発表されるので、3月末決算の企業であれば大体5月くらいに発表されます。
決算発表までは、一般的には前年度のPERが利用されます。
業績が不安定な会社は株価収益率(PER)による判断が難しい
各事業年度で業績が安定している企業もあれば、不安定な企業もあります。
株価収益率は各事業年度の業績に合わせて変化するため、業績の振れ幅が大きい企業ではPERを基に投資判断するのは難しくなります。
株価収益率(PER)には特別利益などの臨時収益も含まれる
純利益は本業による収益以外を含む利益で計算されます。
例えば、有価証券売却による損益は特別利益や特別損失という名目で純利益に含まれます。特別損益が本業と比べて大きな割合になる場合、その年度だけPERが大きく変化することに注意が必要です。
PER10倍でも10年で株価が倍になるわけではない
「PERが10倍なら、10年後には株価と同等の価値の資産が増えるために株価も倍になる」と思うかもしれません。しかし、実際にはそのようにはなりません。
当期純利益から株主へ配当金が支払われる
理由としては、会社は配当金による株主還元を行うからです。
例えば、PER10倍の会社が年間配当5%実施していたとします。PER10倍ということは、会社は1株当たり株価の10%の当期純利益を稼いでいることになります。
しかし、株主への還元である配当金は株価の5%を実施しているために、実際に会社に残る純利益(利益剰余金)は次のように計算することが出来ます。
つまり、PER10倍・配当利回り5%の会社なら、実際には株価に対して年間で5%ずつ剰余金が増える計算になります。株価と同じだけの資産を築くのには20年かかる計算になります。
また余剰金も現金ではなく設備など事業を営むために必要な資産に変化するため、一概に会社の純資産の積み上げがそのまま株価に反映されるわけではありません。
株価収益率のポイントを理解して的確な投資判断をしよう
株価収益率(PER)はファンダメンタルズ分析の基本ですが、PERだけでも様々な事を考えた投資判断ができます。株価収益率を十分に理解すれば投資の判断能力が大きく向上するでしょう。