個人投資家が株式投資を始めて、最初は利益が出ていても最終的に損失を出して辞めてしまうということは珍しくありません。
一定期間は順調に利益が出ていても、継続して利益を出し続けることは非常に難しく、「個人投資家の9割は負けている」という話があるくらいです。
その数字の信憑性はわかりませんが、それだけの数字が出ているとすれば、利益が出ている人よりも損失が出ている個人投資家の方が多いのは確かでしょう。
しかし、私は別の記事で「理論的には株式投資は50%以上の確率で勝てるはず」という理由と根拠を解説をしていますが、なぜこのように負ける投資家が圧倒的に多くなるのでしょうか。
本記事では、なぜ個人投資家が50%以上の確率で勝てる株式投資で負けてしまうのかを解説します。
株式投資は最低でも50%以上で勝てる
株式投資は、非常に単純な資産運用です。株式投資は基本的には「上がるか下がるか」を予想するだけです。
買った株の株価が上昇すれば利益になるし、下落すれば損失になります。上がるか下がるかだけなら確率は50%です。
さらに、株を長期的に保有すれば配当金や株主優待を受け取れます。
上場している会社の株の平均利回りは約2%ですから、平均的な株を1年保有すれば投資額の2%程度の配当が受け取れます。10年保有すれば投資額の20%は配当金として受け取れます。
そう考えると理論的には、株式投資は50%以上の確率で勝てると考えても良いでしょう。業績の変化や景気の浮き沈みなど様々な要因で株価や配当は変動しますが、それは悪い場合だけでなく良い場合にも同じことです。
50%以上で勝てる株式投資でなぜ勝てないのか
では、50%以上の確率で勝てる株式投資でも、多くの個人投資家が負けるのはなぜでしょうか。
仮に20年程度のスパンで、サイコロの出目で適当に買う銘柄を決めて、100回程度株を売買しても1/2程度で勝てるはずです。
それにも関わらず、負ける個人投資家の方が多い理由には、意識が介入することで何も考えない場合よりも判断力が弱くなることが挙げられます。
意識が介入することでやってしまう失敗投資法
人の意識が介入することでありがちな、投資の失敗は以下の2つです。
勝てない時の大きな投資をする
「勝てない時に大きな勝負をするな」と言われても、そのタイミングが分かったら苦労はしないと思われるかもしれません。
しかし、この勝てない時を判断するのは簡単なことで「相場全体が大きく下落している時」です。「落ちるナイフを掴むな」という相場の格言がありますが、まさにこの事ですね。
ただ、下落した時に株を買うこと自体は、結果的に正しい判断である可能性が十分にあると私は思います。問題は「落ちてくるナイフを掴む力」の問題です。
バーゲンセールに惑わされない
例えば、急落相場で株価が1週間で10%下落したとしたら、その株を保有している投資家や買いたい投資家にとって、非常に魅力的な株価水準になったと感じるでしょう。
そのタイミングで、ついバーゲンセールのように下がった株を全力で買ってしまうと、下落が止まらなかった時に、損切りも買い増しもできない状況になります。
下落相場の底は誰にもわかりません。特に急落時は、冷静な判断力ができない投資家や、リスクオフのために躊躇なく売却してくる機関投資家によって、相場の底を探る動きが見られます。
負けている投資で強引に勝とうとする
自分が投資した株が大きく下落しているにも関わらず、損切りしないで塩漬けしたり、ナンピン買いすることも、投資で勝てなくなる要因になります。
得ることよりも失うことを恐れる
心理学にプロスペクト理論があるように、人は心理的に無いものを得るよりも、あるものを失う事を嫌います。
本来、持っているものを失うという心理が強いストレスになるために、それを回避しようとする気持ちが強く働き、株式投資において正常な思考を妨げます。
含み損を抱えた状態では、実際には資産が減少していても損失を確定していないために、まだ失っていないという思考の罠に陥ります。
それが、株で勝てなくなるシンプルな理由の一つです。
失敗した投資で勝とうと無理(楽)をする
そして、その失敗した投資で損切りをせずに、損失を取り戻そうと無謀な売買(買い増しや空売り)をして、ドツボにハマります。
元々、ハンデ(含み損)を抱えた状態は、言ってみればノルマを押し付けられた状態で売買するようなものです。
急落相場での負のスパイラル
「急落相場で含み損を取り戻そうとする」ことは最悪の行動です。
失う事を恐れる投資家心理は株式相場にも顕著に表れますが、その格言として「上げ100日下げ3日」というのがあります。
「株価が100日かけて上昇しても、下落する時は3日ですよ」という意味で、上昇相場よりも下落相場の方がはるかに短時間で動くという相場の特徴を表しています。
こんな相場で、損失を取り戻そうとする気持ちと失う恐怖心を同時に抱えて投資をすれば、悲惨な結果になることは目に見えています。
急落相場で損失を挽回しようとする思考
急落相場で含み損を取り戻そうと考えれば「無謀(楽)な投資」に走りがちです。
急落相場で株価が大きく下落すれば積極的に買い増しを行います。上がると思って買った株がさらに安くなっているんですから、その人にとっては買いやすい株価です。
しかし、急落相場でのパニック状態では、想像以上に下落する可能性が高く、自分が安いと思う株価よりずっと安くなることも珍しくありません。
そうなった場合には、買い増し分もさらに含み損となり、それに比例して失うことの恐怖心も大きくなっていきます。
その結果、資金が不足した個人投資家の取る最後の手段は、致命的なロスカットになるというわけです。
急落相場では買いたい株数の半数以下で良い
私自身、株式投資を長年続けていますが、下落相場の大底で買えた経験より、さらに株価が下がってしまった経験の方が圧倒的に多いです。
ほとんど全ての個人投資家にとって、下落相場の底を見極められる可能性は50%にも満たないでしょう。
この事から、急落相場で株を買うなら、買いたい株数よりもずっと抑えて買うべきです。
【まとめ】株で勝つには心理的要因を克服しよう
50%以上の確率で勝てるはずの株式投資で、個人投資家が勝てないのは、下落相場でこのような心理が働いていることが要因です。
資産を失う恐怖心が投資判断を狂わせることを理解していれば、急落相場での無茶な買い増しは回避できるでしょう。