ファンダメンタルズ分析は、企業の業績や財務状況などから株価が『割安』か『割高』かを判断する分析方法です。短期的な株価の変動ではなく、長期的に株価水準が適正であるかを分析するために非常に役立ちます。
今回はファンダメンタルズ分析について基本と考え方を解説します。
ファンダメンタルズ分析の基本は決算書
ファンダメンタルズ分析は、企業の業績や財務状況をもとに株価の割高、割安を判断する基準ですから、決算書はファンダメンタルズ分析の基本とも言えます。
決算書では会社の業績の進捗や結果に加えて、以下の3つの項目を掲載しています。
- 貸借対照表・・会社の期末時点での財政状態
- 損益計算書・・会社がどれだけ稼いだか
- キャッシュフロー計算書・・会社のキャッシュの動き
決算書を読み分析することも立派なファンダメンタルズ分析ですが、数千社に及ぶ上場企業の業績や財務状況を決算書だけで分析するには莫大な時間が必要になります。
そういった業績や財務状況を数値化して比較できるようにしたのがファンダメンタルズ分析の「指標」です。
ファンダメンタルズ分析で使われる指標
代表的なファンダメンタルズ分析の指標には次のようなものがあります。
株価収益率(PER)
株価収益率(PER)は『株価』と『利益』の関係を表した指標です。
※一株当たりの当期純利益=当期純利益÷発行済み株式数
『株価』を『1株当たりの純利益』で割る事で、その会社の株が割安か割高かを判断します。
株価収益率(PER)でわかる事
株価収益率は株価に対する会社の収益力を割り出します。具体的には、PER10倍なら10年で株価と同じだけの利益を稼ぐことができます。
プライム市場やスタンダード市場に多い、業績が堅調でも成長性が乏しい企業はPERは低い傾向があります。逆に、グロース市場などの成長性の高い企業は、将来性が見込まれるのでPERが高い傾向があります。
より詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
純資産倍率(PBR)
純資産倍率(PBR)は「株価」と「会社の純資産」の関係を表した指標で、会社の「解散価値」とも言われています。
※一株当たりの純資産=株主資本/発行済み株式数
『株価』を『1株あたりの純資産』で割る事で、その会社の株が財務的に割安か割高かを判断します。
PBRが解散価値とも言われる理由は、会社が解散した時の1株当たりの価値に相当する数字でもあるからです。
PBRが1倍なら株価と会社の純資産は同等
PBRが2倍であれば、株価は会社の保有する純資産の2倍の株価で取引されているということになります。
PBRが1倍であれば、株価と企業の純資産は同等であると言えます。しかし実際に会社が解散した場合、株主に株価と同じだけの資産が分配されるわけではありません。
会社の資産には、土地・建物などの不動産や機械設備、車両なども含まれるため、それらの価値がそのまま現金に換金されるわけではないからです。
あくまで、会計上の数値から考える解散価値が純資産倍率であることに注意しましょう。
自己資本利益率(ROE)
自己資本利益率とは『会社の自己資本(株主資本)』から『収益性』を算出した指標です。自己資本利益率は、次の3つの計算方法で算出できます。
- 当期純利益÷自己資本(株主資本)×100%
- 一株当たり利益(EPS)÷一株当たり純資産(BPS)×100%
- 株価収益率(PER)÷純資産倍率(PBR)×100%
『会社の純利益』を『株主資本』で割る事で、株主資本に対してどれだけ効率よく利益を生み出しているかを判断することができます。
具体的にはROEが10%であれば、その年は株主資本を元に10%の利益を上げたという事になります。
海外投資家が重視するROE
海外投資家がROEを重視し、効率よく資本を利用する会社に注目する傾向が高いことから、日本市場でもROEが注目されるようになりました。
総資産利益率(ROA)
総資産利益率(ROA)は他人資本(銀行からの借入など)も含めた資本から、利益率を計算します。ROEと併用することでより正確な企業の収益力を分析することができます。
ファンダメンタルズ分析は中長期投資で役立つ分析手法
株価チャートから将来の動きを予測するテクニカル分析と違い、ファンダメンタルズ分析は業績と財務状況からあるべきの株価の水準を判断します。
そのため、ファンダメンタルズ分析はデイトレードや短期投資ではなく、中長期投資で役立つ分析手法になります。